
「AIに仕事が奪われるって言うけど、金融業界って将来どうなるの?」
「景気が悪くなったら、金融業界もヤバいんじゃないの?」
「なんだかんだ言って、金融ってこれからもずっと”美味しい”業界なの?」
テクノロジーの進化、世界経済の不確実性、そして新たなビジネスモデルの台頭…。
目まぐるしく変化する現代において、多くの業界がその将来性を問われています。そんな中、古くから経済の中心に位置し、巨額の富を生み出してきた「金融業界」は、果たしてこれからもその輝きを保ち続けることができるのでしょうか?
結論から言えば、形を変えながらも、金融業界は本質的に「儲かり続ける構造」を持っていると言えるでしょう。
それは、単に「お金を扱っているから」という単純な理由だけではありません。
この記事では、
- なぜ金融業界が、好景気でも不景気でも、相場の上げ下げに関わらず利益を生み出せる「ビジネスモデルの強さ」を持っているのか?
- 資本主義という経済システムが続く限り、金融が決してなくならない「社会インフラ」としての役割とは?
- AIやフィンテックといった技術革新を「脅威」ではなく「新たな成長エンジン」へと転換する、金融業界のしたたかな適応力
という3つの本質的な理由を、具体的な事例や経済の仕組みを交えながら、徹底的に、分かりやすく解説したいと思います
。
先日のトランプ関税の話題を受けて、市場のボラティリティが急激に上昇しました。
これによって、いわゆる「セルサイド」と言われるような外資系投資銀行などのトレーディング部門などが過去最高益を叩き出したというニュースです。
(セルサイドとは?バイサイドとは?以下の記事をチェック。)


金融業界の収益構造の大きな柱の一つが、「手数料ビジネス」です。これは、顧客が金融取引を行う際に発生する手数料や、資産を預かることに対する管理手数料などによって利益を得るモデルです。
このビジネスモデルの最大の強みは、必ずしも相場が上昇しなくても収益を上げられるという点です。
- 取引手数料(コミッション):
株式の売買、FX取引、デリバティブ取引など、顧客が取引を行えば行うほど、証券会社やFXブローカーは手数料収入を得られます。市場が大きく動けば(上昇でも下落でも)、取引量は増加する傾向にあるため、ボラティリティ(価格変動率)が高い局面でも収益機会が生まれます。- 例: 投資家が株価下落を予測して空売りをする場合でも、その取引には手数料が発生します。
- 資産管理手数料(フィービジネス):
投資信託や年金基金、プライベートバンクなどが、顧客から預かった資産を運用・管理する対価として、資産残高に対して一定割合の手数料(例:純資産総額の〇%)を受け取ります。相場が下落して資産価値が多少目減りしたとしても、残高がある限り手数料は継続的に発生するのです。- 例: 大口の顧客を多く抱えるアセットマネジメント会社は、市場環境に左右されにくい安定した収益基盤を持つことができます。
- M&Aアドバイザリー手数料・引受手数料:
投資銀行は、企業の合併・買収(M&A)の助言や、株式・債券発行(資金調達)の引受といった業務を通じて、高額な手数料を得ます。これらのディールは、経済状況が良い時も、あるいは業界再編が進む不況時にも発生する可能性があります。
もちろん、市場が極端に冷え込んだり、取引量が著しく減少したりすれば、手数料収入も影響を受けます。
しかし、人々が何らかの形で「お金を動かす」「資産を管理する」という行為をやめない限り、金融機関には手数料という形で収益機会が存在し続けるのです。
これは、他の多くの産業にはない、金融業界特有の強みと言えます。

金融は、しばしば「経済の血液」に例えられます。
私たちの体に血液が不可欠であるように、資本主義経済システムが円滑に機能するためには、
金融システムが不可欠な社会インフラとしての役割を果たしています。
この「不可欠性」こそが、金融業界が儲かり続けるもう一つの本質的な理由です。
- 資金の仲介機能:
お金が余っている人(貯蓄者、投資家)から、お金が必要な人(企業、政府、個人)へと、効率的に資金を融通する役割を担います。銀行の貸し出し、株式市場や債券市場を通じた資金調達などがこれにあたります。企業が新しい事業を始めたり、個人が住宅を購入したりするためには、この資金仲介機能がなければ始まりません。 - 決済機能:
商品やサービスの代金の支払いを安全かつ効率的に行うための仕組みを提供します。銀行振込、クレジットカード、電子マネーなど、私たちの日常生活や経済活動は、この決済システムなしには成り立ちません。 - リスク管理機能:
将来の不確実性(価格変動リスク、災害リスク、信用リスクなど)に備えるための手段を提供します。保険商品やデリバティブ(金融派生商品)などが、個人や企業のリスクヘッジを可能にします。 - 情報生産機能:
市場価格の形成や、企業・業界分析レポートなどを通じて、経済に関する様々な情報を生産し、市場参加者に提供します。これにより、資源の効率的な配分が促されます。
これらの機能は、資本主義経済が存続し、人々が経済活動を続ける限り、常に必要とされるものです。
そして、これらの機能を提供する対価として、金融機関は収益を得ることができます。
例えば、企業が成長し続けるためには新たな投資が必要であり、そのためには銀行融資や株式発行といった金融のサポートが不可欠です。
個人が豊かな生活を送るためには、住宅ローンや教育ローン、そして将来のための資産運用といった金融サービスが必要となります。
つまり、経済が成長しても、あるいは停滞しても、形は変われど金融へのニーズはなくならないのです。
これが、金融業界が社会の基盤として、継続的に収益機会を見出し続けることができる理由です。

「AIやフィンテックの登場で、既存の金融機関は淘汰されるのでは?」そんな声も聞かれます。
確かに、テクノロジーの進化は金融業界に大きな変革を迫っています。
しかし、歴史を振り返れば、金融業界は常に時代の変化や危機を乗り越え、むしろそれを新たな成長の糧としてきた、非常に「したたかな適応力」を持つ業界なのです。
- テクノロジーの積極的な活用:
ATMの導入、オンラインバンキング、アルゴリズム取引、そして近年のAIやブロックチェーン技術の活用など、金融業界は常に最新テクノロジーを積極的に取り入れ、業務効率化、新サービス開発、リスク管理の高度化を進めてきました。- 例: AIを活用した不正検知システム、顧客データ分析に基づくパーソナライズされた金融商品提案、ロボアドバイザーによる資産運用サービスなど。
- 規制の変化への対応と新たなビジネスチャンスの創出:
金融危機後の規制強化や、環境問題への対応(ESG投資の拡大など)、新たな金融サービス(暗号資産など)の登場といった規制環境の変化に対しても、金融機関は柔軟に対応し、そこから新たなビジネスチャンスを見つけ出してきました。 - M&Aによる業界再編と競争力強化:
競争環境が厳しくなれば、M&Aを通じて規模を拡大し、効率性を高め、新たな専門性を獲得することで、生き残りを図ってきました。 - 「金融×〇〇」による新たな価値創造:
フィンテック企業との連携や競争を通じて、従来の金融サービスの枠を超えた、より利便性の高い、あるいは全く新しい価値を提供するサービス(例:モバイル決済、P2Pレンディング、クラウドファンディングなど)が登場しています。
重要なのは、金融の本質的な機能(資金仲介、決済、リスク管理など)へのニーズはなくならないということです。
その提供方法やプレイヤーは時代と共に変化するかもしれませんが、その変化に最も早く適応し、新しい技術やビジネスモデルを自らのものにできる者が、次の時代の勝者となります。
Coursera(コーセラ)のようなオンライン学習プラットフォームは、まさにこの金融業界の「変化への適応」を担う人材育成において、重要な役割を果たし始めています。
AI、データサイエンス、ブロックチェーン、サイバーセキュリティといった、これからの金融業界で不可欠となる最先端の知識やスキルを、世界のトップ機関から学ぶことができる講義がたくさんあります。
金融機関自身も、行員のリスキリングのためにCourseraのようなプラットフォームを積極的に活用しているようです。
これは、金融業界が未来に向けて自己変革を続けている証です。


金融市場は、「情報の非対称性」(取引の一方が他方よりも多くの情報を持っている状態)が常に存在し、それが収益機会を生み出す源泉の一つとなっています。
- 専門知識と分析力による優位性:
金融機関は、高度な専門知識を持つアナリストやエコノミスト、トレーダーを多数抱え、独自の調査・分析能力を駆使して、一般の市場参加者よりも早く、深く、市場の動向や個別企業の価値を評価しようとします。この「情報分析力」の差が、投資判断における優位性を生み、収益に繋がります。- 例: 一般にはまだ知られていない成長企業のポテンシャルをいち早く見抜き投資する、市場の非効率性(ミスプライシング)を発見して裁定取引を行うなど。
- 複雑な金融商品の設計と提供:
デリバティブや仕組み債といった複雑な金融商品は、その設計や価格評価に高度な数学的・金融工学的知識を必要とします。金融機関は、こうした専門知識を独占的に近い形で保有し、顧客の特定のニーズに応じた金融商品を開発・提供することで、手数料や利ザヤを得ることができます。 - 情報ネットワークとアクセス:
大手金融機関は、世界中の企業経営者、政策決定者、機関投資家などとの広範な情報ネットワークを持っています。これにより、市場に出回る前の貴重な情報やインサイトにアクセスできる可能性があり、それが投資判断やディール組成において有利に働くことがあります。(もちろん、インサイダー取引は厳しく禁じられています。)
AIの進化によって、情報収集や分析の効率は格段に向上しますが、
最終的な判断や、まだデータ化されていない定性的な情報、あるいは複雑な人間関係が絡むディールの組成といった領域では、依然として人間の専門家の「知識」と「経験」、そして「洞察力」が重要となります。
金融業界は、この「知識」という無形の資本を収益に変える、高度な知識集約型産業です。

金融業界は、その社会インフラとしての重要性から、国家や規制当局と非常に密接な関係にあり、それが結果として一種の「参入障壁」となり、既存の金融機関の収益性を支える構造的な要因となっています。
- 免許制度と厳しい規制:
銀行業、証券業、保険業など、多くの金融ビジネスを行うためには、国からの免許や認可が必要です。また、自己資本比率規制(バーゼル合意など)、顧客保護のための様々な法令遵守、マネーロンダリング対策など、非常に厳格な規制が課せられています。これらは、新規参入者にとって高いハードルとなり、既存のプレイヤーをある程度保護する役割を果たしています。 - 「大きすぎて潰せない(Too Big to Fail)」という暗黙の了解(一部):
システム上重要な金融機関(SIFIs)が経営危機に陥った場合、それが金融システム全体や実体経済に与える影響が甚大であるため、政府や中央銀行が救済に乗り出すという暗黙の了解が存在することがあります。これは、結果としてこれらの機関の信用力を高め、資金調達コストを低く抑えるといったメリットに繋がる場合があります。 - 政策決定への影響力:
金融業界は、その経済における重要性から、政府の経済政策や金融規制の策定プロセスにおいて、一定の発言力や影響力を持つことがあります。
もちろん、規制は金融機関にとってコスト増の要因ともなりますし、過度な保護は競争を阻害するという側面もあります。
しかし、結果として、高度な専門性と信頼性、そして強固な財務基盤を持つ一部の大手金融機関が市場で優位なポジションを維持しやすい構造を生み出していることは否定できません。

金融業界がこれからも「儲かり続ける」と言える背景には、単に景気が良いから、あるいは新しい金融商品が登場したから、といった表面的な理由だけではありません。そこには、
- 相場変動に左右されにくい「手数料ビジネスモデル」
- 資本主義社会に不可欠な「社会インフラ」としての役割
- 技術革新を成長の糧に変える「したたかな適応力」
- 情報の非対称性を収益機会に変える「知識集約型」の特性
- 国家との関係性と「規制に守られた参入障壁」という構造
といった、より深く、本質的な理由が存在します。
もちろん、個々の金融機関の盛衰はありますし、AIやフィンテックによって求められるスキルセットは劇的に変化していくでしょう。
以上、今日は、金融業界の強みについて解説しました!他にもスキルアップや就職、投資等のアイディアについて発信していますので、ぜひご確認ください。
金融業界を目指すのであれば、これらの本質的な強みを理解した上で、変化に対応できる柔軟性と専門性を身につけることが、将来にわたって活躍し続けるための鍵となります。
先述のようなCoursera(コーセラ)のようなプラットフォームは、まさにその「変化に対応するための学び」を提供してくれます。
AI、データサイエンス、金融工学、そして金融市場の本質を教える講座など、キャリアを未来へと繋ぐための知識とスキルを身につけることが可能です。
言語障壁があり、日本ではあまり一般的ではありませんが、海外では数百万人が利用するサービスとなっています。
今後のリストラの嵐にさらされないために、自分の強みをつける。
その一つの手段として、Courseraのようなプラットフォームで学習するのも非常に良い選択肢だと思います。


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